皆さんこんにちは。DANです。
今日はサンゴの白化についてブログを書いていきたいと思います。
海水水槽でサンゴを飼育している際に、
サンゴの白化という現象が起きてその後サンゴが死んでしまう
という経験をしたことがある方は多いと思います。
自分もこれまでにSPSを飼育してきてサンゴを白化させてしまったことは何度もあります。
水槽内で白化する原因として
- 水温の上昇
- 急激な水温の低下
- 水質の悪化
- 水中内のウイルスや細菌によるもの
- 物理的ストレス
があります。
ではなぜ、サンゴは白化してしまうのか、
白化とはサンゴにとってどんな状態なのかを簡単に説明したいと思います。
サンゴの白化といってもものすごく多くの理由があると思います。
Contents
1 サンゴの白化とは
サンゴにとって栄養補給や成長のためにものすごく重要な褐虫藻という単細胞の藻類がいるのです。
そして、この褐虫藻がサンゴから抜け出すことが白化の始まりです。
自然界でも夏場の水温が1度から2度上がった状態で褐虫藻が脱出が始まります。
海水水槽では、
水温の上昇やKHや微粒元素の不足、照明の不足や過剰そのた色々な条件により白化します。
白化はこれらの事が原因でサンゴが褐虫藻を追い出すわけではなく、
褐虫藻が自らサンゴ内から脱出することで起こります。
![](https://noahsarks.blog/wp-content/uploads/2020/11/img_0646-473x1024.jpg)
この画像の茶色い点が褐虫藻だと思ってください。
つまり元気な状態のサンゴはこんな感じで、
身体に褐虫藻を持って光合成によりエネルギー補給をしながら、成長しています。
そのため、自然界では茶色っぽい個体が多いような気がしますが、
UVなどで、蛍光たんぱくを確認するとサンゴ本来の色が確認できます。
![](https://noahsarks.blog/wp-content/uploads/2020/11/img_0647-473x1024.jpg)
逆に褐虫藻が抜けたり、
褐虫藻の光合成色素が抜けたサンゴはこのような感じで真っ白に色が抜けてしまします。
中には蛍光タンパクの色が残りパステルカラーのように見えることもあるようです。
褐虫藻が抜けて、エネルギー補給が出来なくなったサンゴは元気がなくなり、
段々と衰退していきます。
人間の餓死と同じような状態です。
具体的になぜ褐虫藻がサンゴ内から脱出するのかというと、
水温が上がることにより、
褐虫藻が光合成によりエネルギーを作る際に発生させる活性酸素が増えます。
活性酸素は人体にも有害であり、
人間も活性酸素が蓄積すると筋肉疲労や体調不良さらに病気の原因になるほが、
自分の遺伝子も傷付けると言われています。
これはサンゴにも同様で、タンパク質や遺伝子を破壊するため、
これを避ける為に褐虫藻がサンゴの中から逃げ出すのです。
また、水温上昇以外にも急激な水温の低下、
淡水流入による塩分濃度の低下などが白化の原因を引き起こします。
つまり、真っ白になる原因は、サンゴの中から褐虫藻が抜けたり、
褐虫藻の色素が抜けていくことで、サンゴの組織が丸見えになり、
サンゴの組織そのものには色がついていないので、
サンゴの組織の下にある真っ白な炭酸カルシウムの骨格が透けて見えるます。
これがサンゴの白化現象の正体です。
ただ、サンゴの持つ蛍光タンパク質でパステルのような色に見えることもあるそうです。
近年サンゴの持つ蛍光色素には、環境ストレスに対する防御機能があることが報告され注目されています。蛍光色素は、エネルギーが高く湯が居な紫外線をたくさん浴びた場合ストレスの原因となる余分な光エネルギーを吸収して、より外の少ない波長の傾向として放出することで白化をおさえるなど、少しでも生き残る可能性を高める為に必要な機能を持っていると考えられます。
2020 中村 崇・山城秀之 共著 サンゴの白化
因みに資料を確認すると、骨格がまっ黒のサンゴは白化せずに、
黒化し、骨格が青いサンゴは、青化するそうです。
2 サンゴの餓死
因みにサンゴは白化した状態でもまだ死んでしまったわけではなくポリプは生きています。
しかし、褐虫藻が抜けてしまい、
エネルギー補給の手段がなくなったサンゴは絶食を強いられます。
白化してすぐに死なないのは、
資料を参考にするとこれまで蓄えていた脂肪と呼ばれるワックスとトリアシルグリセロールを分解して必要なエネルギーを得て代謝を維持するそうです。
そして、この脂肪がなくなると餓死を迎えて白骨化します。
つまり、白化したサンゴでも褐虫藻が戻ってきたり、
残っていた褐虫藻が増殖すれば白化状態から復帰することもあるそうですが、
自分の経験上水槽での飼育環境下で褐虫藻が戻ったことは無いので、
相当のベテランアクアリストでなければ復活させるのは難しいのではないかと思います。
白化から白骨化までの具体的な期間はサンゴによってさまざまですが、
資料などを確認してみると、数週間から数カ月と言われています。
これは保有している脂肪の量に由来するのだと思います。
アクアリウム用品でもリーフエナジーAB+などサンゴの餌になるようなものがあるので、
こういったサンゴフードのようなものを使うことで、
延命することが出来るのではないかと思います。
3 褐虫藻とは
褐虫藻は単細胞の藻類で渦鞭毛藻類に属するものの総称です。
通常の葉緑素以外にペリジニン色素を持つために褐色になります。
自然界のサンゴで褐虫藻を大量に持っている造礁サンゴに茶色いのが多いのはこのためです。
また、褐虫藻は、サンゴ以外にも同じ刺胞動物であるタコクラゲやサカサクラゲなどのクラゲ類やイソギンチャク類、軟体動物のシャコガイやリュウキュウアオイなど海産無脊椎動物の細胞などに共生しています。
海水水槽で厄介者とされるヒドロ虫もクラゲと同じ種類の生き物なので、
このヒドロ虫も褐虫藻を持っているのだと思います。
また、資料を参考にすると褐虫藻も昔は1種類と考えられていたそうですが、
DNA解析をした結果大きく9つの種類(クレード)に分けられるそうで、
その褐虫藻の種類により白化しやすいものや高水温に強いものなどが居るそうです。
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4 どのようにサンゴの中から褐虫藻が抜けるのか
褐虫藻がサンゴの中から抜ける際に、
褐虫藻は丸形の形から、
鞭毛の付いた遊泳型褐虫藻に変化します。
因みにこれは、赤潮の原因生物とは親戚関係のようです。
![](https://i2.wp.com/noahsarks.blog/wp-content/uploads/2020/11/img_0643.jpg?ssl=1)
![](https://i2.wp.com/noahsarks.blog/wp-content/uploads/2020/11/img_0645.jpg?ssl=1)
ちょっと画伯過ぎて分かりずらいかもしれませんが、
上の図のように褐虫藻は変化して、サンゴの中から脱出するようです。
要は褐虫藻はしっぽが生えることで、
水の中を泳げるようになり、
サンゴの中から逃げて行ってしまうという事なんでしょうね。
5 サンゴ白化の原因
⑴ 水温の上昇
これまでにも書いてきましたが、
自然界でのサンゴの白化の原因は水温の上昇が一番多いようです。
では水槽内ではどうかというと、
水槽内でも同様にクーラーを設置していない水槽では、
夏場の水温上昇によりサンゴにダメージを与えることがあります。
さらに照明や水質、水流、微粒元素など水槽のような閉鎖環境の中では、
こういった水温の変化やその他の事情がサンゴに対して大きなダメージを与えてしまうのだと思います。
⑵ 水温の低下
これも水温の上昇と同じように、
急激な変化により褐虫藻がサンゴ内から逃げることで白化します。
海水水槽でもヒーターが突然壊れたり、
温度の急激な変化はサンゴに大ダメージを与えます。
しかし、自然界では、原因は不明ですが、
秋口の水温のやや下がった時期にグレートバリアリーフの911か所でサンゴの白化が確認されたそうです。
原因がわからないのがなんとも悩ましい感じですが、
サンゴ礁維持のためにも原因が早くわかってほしいなと思います。
また、自然界では、
ハナヤサイサンゴや被膜状のコモンサンゴなどは冬場の低水温で白化が顕著にみられるようです。
⑶ 水質の悪化や不適合環境
水槽内では、サンゴに必要な元素の不足やライトの照度(細かくは割愛します)不足による褐虫藻による光合成ができない環境や逆に強すぎる光による日焼け、
硝酸塩やリン酸塩の値の上昇に伴う成長阻害などがあげられます。
これは自然界でも同様で、
淡水の流入による塩分濃度の急激な変化や土の中からのリンの溶出。
水温上昇によりサンゴが弱っているところに、
強い紫外線による刺激などがあげられます。
実際に自然界でもリン酸の値が高いところにはあまりミドリイシのようなサンゴの生息は見られないようです。
⑷ ウイルスや細菌によるもの
海水水槽でサンゴを飼育していると、
RTNというビブリオが原因と疑われている細菌感染症などがあります。
サンゴも動物なのでこのように病気にかかることもあり、
海水水槽でこの病気が発症した際には直ちに隔離するなどの措置をとった方が良いと言われています。
病気に関しては厳密には白化の定義とはちがうかもしれません。
また、自然界でも1960年代からブラックバンド病といわれるシアノバクテリアや硫酸還元細菌等が原因の病気があり、
この病気にかかるとサンゴが黒い帯状に見えることからこの名前が付いたと言われています。
他にもカビ等の真菌類によるものなど様々です。
⑸ 物理的ストレスによるもの
物理的ストレスはそのまま読んだ通り、
水槽内で設置したところから落ちたり、
他のサンゴと接触したり、
眼に見える原因によるものです。
6 白化しやすいサンゴ
先ほども褐虫藻のところで書きましたが、
サンゴの白化は、サンゴの種類と褐虫藻のタイプにより異なります。
現在流通するサンゴにはある程度の飼育方法や難易度がネットなどで確認できると思います。
飼育が比較的容易なサンゴほど、
サンゴと褐虫藻の共生関係が強く白化しずらいのだと思います。
逆に同じタイプの褐虫藻を持っているサンゴでも種類によっては白化しやすいなど様々なようです。
7 番外編 褐虫藻のいないサンゴ
ちょっと前にニュース等で話題となった宝石サンゴの類は、
褐虫藻のいないサンゴです。
同様に陰日性サンゴも褐虫藻はいません。
というのもこれらの種類のサンゴは、
褐虫藻による光合成のエネルギーが必要なく餌を捕食することによってエネルギーを得ているからです。
8 まとめ
サンゴの白化は白骨化と違い褐虫藻が抜けてエネルギーを得ることが出来ない状態です。
しかし、この状態でもサンゴのポリプはまだ生きており、
褐虫藻が戻ったり、残った褐虫藻が増殖すれば、
復活することがあります。
ただ水槽のような閉鎖環境下ではかなり難易度が上がると思います。
サンゴを白化させないためにも、
サンゴに適した環境を作り出すアクアリストの細かいメンテナンスが必要になるのでしょう。
8 参考文献
2016 山城秀之 サンゴ知られざる世界
2020 中村 崇・山城秀之 共著 サンゴの白化